こんにちは。院長の小澤です。
ようやく春の兆しが見え隠れする陽気になってきました。
今冬は寒かったこともあってか、姿勢のお悩みを多く伺いました。
「姿勢が悪いよ、と言われるけど、気をつけてもすぐ戻る」
「トレーニングでフォームが崩れる。意識してるのに直らない」
「子どもがいつもぐにゃっと座っている」
「最近、歩き方が変わった気がする」
こうした体の悩みや違和感は、年齢を問わずよくありますね。
『筋力が足りない』『意識が足りない』で片づけてしまいがちですが、
実はその背景に、ある共通の仕組みが隠れています。
それが【代償動作】です。
今回はこの代償動作について、
デスクワーク中心の方、
トレーニングをしている方、
お子さんの姿勢が気になる方、
そして加齢による変化を感じている方まで、幅広い視点でお話しします。
知っているだけで、体との付き合い方が変わるかもしれません。
代償動作とは何か ― 体は「壊れないほう」を選ぶ
まず、代償動作とは何かを簡単にご説明しましょう。
私たちの体は、
ある筋肉や関節がうまく働かなくなったとき、
「動けない」を選びません。
「別の場所を使ってでも動く」という判断をします。
本来使うべき部位が十分に機能しないとき、
体は別の部位で補おうとする。
これが【代償動作】です。
たとえるなら、
チームの中で一人が休んだとき、
残りのメンバーがカバーし合うようなもの。
体のなかでも、同じことが日々起きています。
大事なポイントは、
代償動作は異常な動きではないということです。
むしろ、体が壊れないために自ら選んだ"守りの戦略"です。
ただし、この「守りの動き」が長く続くと、
カバーしている側に負担が集中していく。
ここに問題が生まれます。
デスクワーク世代に多い代償動作 ― 猫背・巻き肩の本当の理由
猫背や巻き肩もまた、
代償動作として理解するとすっきりします。
長時間座り続けると、
体幹の深層筋(インナーマッスル)の出番がなくなります。
椅子の背もたれが体を支えてくれるので、体幹は「休眠状態」に。
すると体は、
筋肉で支えるかわりに背中を丸めて骨と靭帯に寄りかかるように座り始めます。
これが猫背の正体です。
巻き肩も同じ構造です。
パソコン作業で両腕が前に固定されると、
胸の筋肉が縮んだまま固まり、
肩甲骨を引き寄せる背面の筋肉が使われなくなる。
「前が強すぎる」のではなく「後ろが使えていない」結果です。
「胸を張って」「背筋を伸ばして」と意識しても、
すぐ元に戻ってしまうのは意志の問題ではありません。
正しい姿勢を維持するだけの筋力がまだ備わっていないからです。
意識の前に、体の土台を整える必要があるのです。
トレーニングで起きる代償動作 ― 「フォームが崩れる」の正体
トレーニングをされている方にとっても、代償動作は身近な存在です。
スクワットで膝が内側に入る
これは臀部の筋力不足を、
太ももの前側や内転筋で代償している典型例です。
デッドリフトで腰が丸くなる
これは臀部や裏もも(ハムストリングス)の代わりに、
背中の筋肉で持ち上げようとしている状態。
腹筋運動で首が痛くなる
これは体幹が使えていないために首の筋肉で体を引き起こす代償動作です。
いずれも共通しているのは、
弱い部分を避けて、得意な部分で乗り切ろうとする体の反応だということ。
「意識してもフォームが直らない」のは、意識の問題ではなく、
使えていない筋肉があるからです。
正しいフォームを身につけるには、
まず代償の原因になっている筋肉を見つけ、
そこを「使える状態」にすることが先決です。
子どもにも起きている代償動作 ― 「姿勢が悪い」には理由がある
お子さんの姿勢が気になる保護者の方は多いと思います。
つい「ちゃんと座りなさい」と言いたくなりますが、
ここにも代償動作が隠れていることがあります。
背もたれに寄りかかる、
机に覆いかぶさる、
片脚を椅子に乗せる。
こうした座り方は、
体幹がまだ十分に発達していないために
「まっすぐ座り続ける」こと自体がきつく、
背もたれや机で体を支えている状態です。
大人の猫背とまったく同じ構造の代償動作です。
スマホやゲームの問題は、
画面を見る姿勢だけではありません。
走る、跳ぶ、ぶら下がるといった全身運動の時間が減ることで、
体幹や臀部の筋肉が発達しにくくなる。
その結果、座る場面で体を支えきれなくなってきます。
スポーツをしている子どもにも起こります。
片側を多く使う競技では左右の筋力差や柔軟性の偏りが生まれやすく、
弱い側を反対側で代償するパターンが定着することがあります。
体幹が弱い子に「まっすぐ座りなさい」と言い続けても、
本人にとっては「できない」に近い状態かもしれません。
まずは遊びや運動のなかで自然に体幹を使う機会を増やし、
体の土台をつくること。
自分の体の使い方が自分で理解できると、
「良い姿勢を保てる体」になります。
当院のこども整体は、
お子さん一人ひとりの体の使い方を見ながら、
代償動作のパターンを把握し、
必要な機能を引き出すサポートを行っています。
お気軽にご相談ください。
犬にもある!代償動作
実は、犬にもまったく同じことが起こります。
後肢(うしろ脚)の筋力が落ちた犬は、
前肢に体重をかけて歩くようになります。
首が下がり、歩幅が狭くなり、立ち上がりに時間がかかる。
ヒトの加齢でよく起こる
「前かがみ姿勢」「小刻み歩行」「立ち上がりで手をつく」
と、まったく同じ構造です。
種は違っても、体を守る仕組みは同じ。
私はヒトの施術に加え、
犬の整体やリハビリトレーニングにも携わっていますが、
「代償動作に気づき、本来の動きを取り戻す」
というアプローチは、
種を超えて通用すると日々実感しています。
加齢による代償動作 ― 「歳のせい」で終わらせないために
年齢を重ねるなかで起こる変化にも、
代償動作は深く関わっています。
加齢にともなって低下しやすいのは、
・体幹の安定性
・臀部の筋力
・股関節の可動域
・バランス能力
いずれも「体の後ろ側で支える力(後方支持)」です。
後方支持が弱くなると、体は前側で補おうとします。
背中が丸くなる、
歩幅が小さくなる、
立ち上がりで手をつく、
階段で手すりに頼る。
これらはすべて、体が今ある力で安全に動くために選んだ方法です。
デスクワーク、トレーニング、子どもの姿勢、犬の歩き方と、
すべてに同じ原則が当てはまります。
使えていない筋肉があり、それを別の部位が補っている。
だからこそ、
加齢による変化も「仕方ない」ではなく
「気づいて、整える」対象になるのです。
代償動作を放っておくとどうなるか
代償動作そのものは、体の知恵です。
壊れないための調整であり、
それ自体は悪いものではありません。
しかし、問題はそれが長期間にわたって固定化されることです。
本来使うべき筋肉が使われないまま、
別の部位がカバーし続ける。
するとカバーしている側に疲労と負担が蓄積していきます。
たとえば、後方で支えられないために前側に頼り続けると、
首や肩、腰の前面、膝の前側などに過剰な負担がかかりやすくなります。
「慢性的な肩こり」「繰り返す腰痛」「膝の違和感」の背景に、
実は代償動作の固定化が隠れていた、
というケースは臨床の現場でも珍しくありません。
そして使われなくなった筋肉はさらに弱くなります。
代償が続けば続くほど、
本来の動きを取り戻すのが難しくなるという悪循環です。
年齢に関係なく、代償動作に早く気づき、対応を始めることが大切です。
代償動作を減らすために ― 共通する3つの鍵
代償動作を完全になくすことは難しいです。
体は常に効率を求めますし、
弱い部分を避けるのは自然な反応だからです。
しかし、減らすことはできます。
そして年齢やライフスタイルを問わず、ポイントは共通しています。
① 後ろで支えられる体をつくる
臀部(お尻)の筋肉は、
立つ・歩く・しゃがむ・階段を昇る、あらゆる動作の土台です。
しかし現代の生活では、
座っている時間が長いことで
お尻の筋肉が「眠ってしまう」ことが非常に多い。
これは子どもも大人も同じです。
ヒップヒンジの練習やお尻を意識したスクワットなどで、
まずお尻の筋肉に「ここを使うんだよ」と
思い出させることが出発点になります。
② 体幹を「使える」状態にする
体幹トレーニングというと、
プランクやバキバキの腹筋をイメージする方もいるかもしれません。
しかしここで大事なのは、
動きのなかで体の中心がブレないことです。
立った状態で片脚を上げる、
歩きながら体幹を意識するなど、
日常動作に近い形で体幹を使う練習が効果的です。
子どもの場合は、
遊びのなかで四つ這いやぶら下がりなど、
自然と体幹を使う動きを取り入れることが有効です。
③ 骨盤をコントロールできるようにする
骨盤が安定していることは、姿勢を保つうえで欠かせません。
骨盤が前後に大きく傾いたまま固定されると、
その上の背骨もその下の脚の動きもすべてに影響します。
骨盤を意識したスクワットや、
四つ這いでの骨盤コントロール練習が地味ですが確実に効きます。
いずれにも共通するのは、
「強くする」よりも「正しく使えるようにする」という考え方です。
代償動作の改善に必要なのは、
ハードなトレーニングではなく、
眠っている筋肉を目覚めさせ、
正しい順番で使えるようにすることなのです。
まとめ ― 代償動作は体からのメッセージ
代償動作は異常ではありません。
それは、体が壊れないように選んだ合理的な動きです。
けれど放っておくと別の部位に負担が集中し、
痛みや不調の原因になることがあります。
デスクワークの猫背も、
トレーニング中のフォーム崩れも、
子どもの姿勢の崩れも、
愛犬の歩き方の変化も、
加齢にともなう体の変化も、
根っこは同じです。
使えていない筋肉があり、体がそれを別の場所で補っている。
大切なのは、後ろで支えられること。
体幹が安定していること。
骨盤がコントロールできていること。
代償動作に気づくことは、体を守る第一歩です。
「自分の姿勢や動きが気になる」
「子どもの姿勢が心配」
「トレーニングのフォームが安定しない」
そうした方は、お気軽にご相談ください。
あなたの体が今、何を代償しているのか、
是非一緒に見ていきましょう。



