わんちゃんのプロフィール
9歳オス(ミニチュアシュナウザー)。ペットショップで一目惚れをして購入。
子犬の頃からリードを付けると嫌がって散歩せず。
ドッグランではよく走り、とても楽しそうに遊ぶ。走らせた翌日も不具合は見当たらず元気にしている。四肢含め全身の検査はもちろん、しつけ教室に通ったり、トレーナーさんにお世話になったが改善しないまま現在に至る。
からだの疾患や異常は全くなし。
来院のきっかけ、理由
1.リードを付けて散歩させたい
リードを付けると数分経たずに歩かなくなってしまう。痛がっている感じはないが、理由を知りたい。運動不足になってしまうことを防ぐためドッグランによく通っていが、シニアになってきたので、わざわざ出かけて運動するよりも日頃リードを付けて散歩ができれば、健康管理がしやすく安心だと考えている。
当院の見立て
尻尾が左に流れており、上から見た際に背中がやや逆Cの字になっている。右後ろ足から腰・股関節にかけての筋緊張が大きい。
同時に右肩が下がり気味になっており、からだ全体が右へ沈んでいる。上記のねじれにより反時計回りにからだが回りやすく、リードを付けることによって歩きにくくなることが原因と捉える。
右側の縮んだ体側を伸ばすこと、下がり気味になっている首を解放することも兼ねて胸部の筋緊張を緩めることで改善できるのではないかと見立てた。
実際に行った施術
施術時間10分。
・尻尾をゆるめる
尻尾を軽く持ち上げ、尻尾付け根と肛門の間にあるポイントを優しく押圧。腰や後ろ足の可動域が広がり、からだが柔軟に動き歪みを整える効果あり。
・右肩をゆるめる
とりわけ疲れがたまりやすい肩甲骨の上の筋肉や上腕三頭筋を押圧。広背筋の付け根に当たる脇の下も一緒にゆるめる。
・右後足をゆるめる
太ももの裏や骨盤の上の筋肉に対し、指や手の平で円刺激や往復刺激を加える。
・背中をゆるめる
前足の付け根から背骨にかけて、非常に大きな筋肉が付着している部分(広背筋)を押圧。右上の横向き(横臥位)にしても縮んだ右体側を更に入念にうるめバランス調整。
・胸部をゆるめる
体重の半分を支えるための胸筋群が付着しており、特に疲労がたまりやすい前足の付け根から胸の中央にかけての部分をゆるめる。この部分を念入りにほぐすことで前に下がった首を持ち上げ、背中をより真っ直ぐに伸ばす調整をする。
施術の結果
1回の施術でリードを付けて散歩できるようになる。
施術を受けた当日は、とにかくよく寝ていたとのこと。翌朝、排泄のためにリードをつけて外へ出たところ、いつもよりも早く歩き、まったく嫌がらずに20分散歩できた。
まとめ
・リードを付ける短時間しか歩けなかった症状は、からだの歪みによりまっすぐ歩きにくいことが原因だった。
・左を向いてよく寝る姿勢や、飼い主さんが左に座ることが多い生活環境もあり、反時計回りにからだをねじりやすい歪みがあった。
・からだの歪みからまっすぐ歩きにくい為、リードを付けると短時間で座り込んでしまっていた。
・尻尾周りと後ろ足股関節、腹部の筋緊張を緩めたことで、首が自然に持ち上がり歪みが大きく改善された。
院長からのコメント
当院を癒やしてくれる、物を言わない犬たちですが、とてもシビアな患者さんでもあります。
症状が良くなると途端に寝てしまったり、ちぎれんばかりにしっぽを振って喜んだりと施術効果が目に見えて分かります。
これは私たち施術者に、毎回いい緊張をもたらしてくれています。
日本の整体指導者の祖、「野口整体」の創始者である野口晴哉氏は生前、「(会話のできない)赤ん坊と犬が施術できれば、一人前の整体師だ」とおっしゃていたそうです。
犬たちそれぞれのからだの歪みや筋緊張の場所、押圧した時の顔の表情やリアクションからどれだけ不調を読み取って施術できるか。
人間を施術する時以上に、受者との意思疎通を図る心配り、手の感触から得られる「直感」が求められる故のお言葉ではないかと考えます。
今回のケースはからだの歪みこそあったものの痛みはなく過ごせていたことで、長年原因を突き止められなかったのではないかと推察します。
病気と言うほどではないけれど、健康でもない状態のことを「未病」と言います。
健康診断や検査などで異常がなくても症状がある場合は、未病の状態である可能性があります。当院では、ヒトの施術で培ったからだのバランス不和や関節・筋肉の固さやむくみ、呼吸の浅さなどから未病の原因をつきとめる施術を犬にも同じように行っています。
健康維持や未病の改善、病気の予後など、愛犬が元気で過ごせるようにと当院をご活用下さる飼い主様の思いは皆様同じです。
「長く一緒に過ごせるように」。犬たち・飼い主様それぞれのQOL(クオリティ・オブ・ライフ:精神面を含めた人生の質)が高まる施術を行っています。