足の捻挫(足関節及び足部の捻挫)は外傷の中でも極めて頻度が高いケガです。
捻挫とは、転倒などによりひねるなどして起こる、靭帯(じんたい)の外傷のことです。靭帯は、関節の中にある骨と骨をつないでいる組織のことです。
靭帯には関節が動ける範囲以上に曲がったり、伸ばされすぎないように安定させる大切な役割があります。これが何らかの負荷によって通常動かせる範囲以上にひねられてしまうことで捻挫します。
例えば、ジャンプから着地をした際に、足の外側で着地をしてしまうと、着表面が少ない状態で全体重がかかり、靭帯が支えきれずに損傷を起こし捻挫になる・・・という具合です。
捻挫は比較的よくある症状ですが、捻挫の治療が適切に行われなかった場合には捻挫の起こった関節が不安定になってしまったり、痛みが残ったりします。これらの後遺症により、再び同じ方向に足首をひねってしまい、再び捻挫することも。
今回は、
- 捻挫する方向
- 捻挫の度合い
- 回復までの期間目安
- セルフ処置方法から紐解く、度重なる捻挫「捻挫ぐせ」をなくすポイント
をお伝えします。
内側捻挫と外側捻挫
足首の捻挫は、足首を内側か外側の方向に、不自然な形で強くひねることで起きます。ひねったのが内側か外側かで、重症度が変わってきます。
足関節の構造から考えると、足首は外側よりも内側のほうに動かしやすいため、足首を内側にひねってくじくことが多いと言われています。
よって、内側にひねって起きる捻挫は比較的軽症で済むことが多く、セルフ処置だけで十分なケースも多いです。
足首を内側にひねった場合、足関節の外側にある次の3つの靭帯のいずれかが損傷したり断裂したりしていると考えられます。
ほとんどの場合、足首の捻挫は前距腓靱帯のみ、もしくは、前距腓靱帯と踵腓靱帯両方の損傷と言われています。
・前距腓靱帯(ぜんきょひじんたい)
・踵腓靱帯(ひょうひじんたい)
・後距腓靱帯(こうきょひじんたい)
いっぽう、外側にひねって起きる捻挫は、よほどの強い力が加わらない限り起きることはありません。外側にひねる捻挫が多く起きるのは、ラグビーやアメリカンフットボールなどの激しい接触のあるスポーツや交通事故などです。
足首を外側にひねって捻挫した場合には、内側の靭帯である「三角靭帯」が損傷していると考えられます。また、骨折を伴うこともあります。
捻挫の3段階 セルフチェックの目安
捻挫は、靭帯損傷の程度で重症度が変わってきます。
足首の近辺の腫れ具体や痛みの度合いによって、この重症度をある程度予測することができます。
1.軽度
状態:靭帯が伸びている
症状:少し腫れ、痛みも軽い。歩くのは少し困難を伴う程度
主な治療法:応急処置のRICE※
スポーツ復帰できるまでの期間の目安:10日間~2週間程度
※応急処置RICEとは
捻挫をしたらまず安静にして氷や保冷剤などで患部を冷やし、包帯やテーピングなどで固定し、捻挫した足を心臓より高く上げます。この捻挫時の応急処置方法を「RICE」と呼びます。RICEとは、「安静=Rest 冷却=Ice 圧迫=Compression 拳上=Elevation」の頭文字を取ったものです。
◇安静=Rest
無理に動かしたり、体重をかけたりすると症状が悪化することがあります。座って捻挫をした足首を安静に保ちましょう。
◇冷却=Ice
捻挫した足首を冷やして、痛みや内出血、炎症を抑えます。ビニール袋の中に氷を入れたものや保冷剤を、テープや包帯、タオルなどを介して患部に当てましょう。
◇圧迫=Compression
出血や腫れを防ぐために、テーピングや包帯で足首を圧迫します。足首の捻挫の場合、パッドなどを当ててから巻いても良いでしょう。
ただし、圧迫が強すぎると血流悪化や神経圧迫の恐れがあるので、時々、足指の先が青くなっていないかをチェックしましょう。
◇拳上=Elevation
足首を自分の心臓よりも高い位置に上げると、内出血を防ぐことができ、痛みも和らぎます。クッションやまくら、台などをうまく使いましょう。
2.中度
状態:靭帯が部分的に切れている
症状:かなりの腫れが見られ、ひねった側に体重をかけるのがつらく、普通に歩くのが困難
主な治療法:応急処置のRICEと包帯やテーピングなどでの固定(1~2週間程度)
スポーツ復帰できるまでの期間の目安:3週間~4週間程度
3.重度
状態:靭帯が完全に切れている
症状:関節内で出血するため、足関節全体が腫れる。腫れている箇所を押すとかなり痛む。 歩く際には松葉杖を要するほどになることが多い。
主な治療法:応急処置のRICEだけでは治まらないため、一定期間ギブスで固定、もしくは機能的装具で運動療法を実施。場合によっては縫合手術を行うこともある。スポーツ復帰できるまでの期間の目安:5週間~7週間程度
足首の捻挫のセルフ処置方法~ここが「捻挫ぐせ」をなくすポイント!
足首捻挫の正しいケアは
1.まず炎症が治まるまで安静(2~3日)
2.なるべく動かさない(~2週間)
3.リハビリ(2週間~4週間)
と言われています。「捻挫ぐせ」をなくす上で非常に大切なのは、
「2.なるべく動かさない(~2週間)」です。
「1.炎症が治まるまでは安静」ということは常識として広く知られてますが、2週間の固定が大事ということは、ついついないがしろになってしまうケースが多いようです。
2週間という期間は決して短くなく、アスリートなどは早い復帰の希望から、ちょっと焦って痛くてもプレーしてしまうのが、癖になってしまう大きな要因です。
また運動しない人でも、炎症が治まった後に固定をせずにほうっておくと、若いうちは周りの筋肉(腓骨筋群)が損傷した靭帯の役割をリカバリーして足首を安定させてくれるのですが、 加齢とともに筋肉が落ちてくるので足首が不安定になり、足関節内の軟骨がすり減ってきて変形や痛みを引き起こしてしまいます。
固定することでグラグラする痛みをテープやサポーターで動かないようにして抑えるということはもちろん、固定する理由はそれだけではありません。
二週間きちんと固定しておくことで、靭帯を修復するための組織であるコラーゲンが増えてきて、、靭帯の再生・強化が期待できると言われているのです!
もちろん程度によりますが、固定していた後にしっかりリハビリトレーニングをすれば、たるみなくくっつくだけでなく、以前よりも太く丈夫な靭帯になるということもあるようです。
捻挫で一番損傷される機会が多いのがこの前距腓靭帯です。
損傷の程度はさまざまですが、重症度が高くなると足関節の不安定性が生じるようになります。かかと上げのような足首の動きをすると、前距腓靭帯に刺激が加わり、靭帯内のコラーゲンの質が変わって太くて丈夫な靭帯になるのだとか!
そうなれば、捻挫ぐせもなくせますし、将来的に軟骨がすり減って変形・・ということも予防できます。
昔捻挫をしたままで治しきれていない場合も、リハビリトレーニングを今からでも始めれば捻挫ぐせ予防になります。過度に負担をかけすぎず、少しずつ伸ばしていきましょう。
足首やひざに不安がある方は当院でメンテナンスを
捻挫ぐせは、足首だけでなくひざ痛や腰痛・肩のこりを引き起こすことも間々あります。
例えば右足首を内側にひねる捻挫ぐせがあり、右肩ばかりがこる場合、足首が内側に入ることで腓骨が外に広がり、これが原因で右足が短くなって右肩が大きく下がっている状態になっています。
ハイキングやスポーツを存分に楽しめる季節、よく動いたあとに痛くなる足首を、きちんとメンテナンスしてみませんか?
からだ全体のバランスや使い方を確認する時間は、10年後も同じ動きができるからだを作ります。