「ぎっくり腰」のような、電気が走るような痛みが突然襲ったり、椅子などから立ち上がろうとした瞬間にひどく痛んで立てない・・・
でも「ぎっくり腰」とはちょっとちがうかも?
そんな時は、臀部(でんぶ:お尻)の筋疲労が原因かもしれません。
- 腰はまぁまぁ動かせるが、便座に座るなどの座る動作と前屈みになる動作でひどく痛む・股関節が伸ばせない。広がらない
- 「ぎっくり腰」よりも回復に時間がかかってあせる
- 足にしびれはなく、お尻やその周辺のみが痛む(しびれが出ている場合は坐骨神経痛や腰椎ヘルニアが考えられます。)
上記のような症状が当てはまる痛みは「ぎっくり尻」かもしれません。(このような急性の臀部痛を当院では「ぎっくり尻」と呼んでいます)
最近、「ぎっくり尻」でご来院された患者様の症例を挙げながら、
・臀部のどの部位が痛んでいるのか
・どのように緩めればいいのか
を見ていきましょう。
症例1
生後5ヶ月のお子さんを深く前へ屈んで沐浴後、立ち上がろうとした際にお尻に激痛が走る。
痛めた場所
中殿筋はお尻の上部から側方にかけて存在する筋肉で「歩行時に骨盤が落下しないようにする働き」「左右方向への安定性を保つために働き」を担っています。
中殿筋は腰の左右にある腰方形筋(ようほうけいきん)と連鎖する関係にあります。
症例1の患者さんは、出産後からずっと腰痛を感じていたとのこと。
おそらく、腰方形筋が極度にこっていたことでお尻を痛めてしまったと考えられます。中殿筋と腰方形筋はそれぞれ反対側にある筋肉同士が互いに引っ張りあって、骨盤の左右への傾きを調節しています。
左右への重心移動のコントロールすることで、骨盤を落下させないように一定の位置に保っています。
このように密接な関係がある筋肉同士であるために、腰方形筋の機能不全を反対側の中臀筋がカバーすることになり、負担に耐えられなくなったとき中臀筋の痛みとなって症状が現れます。
ストレッチで改善を図るなら
注:急性の痛みがあるうちは行わないで下さい!少しずつ快方に向かってきた際や、日頃の予防でのストレッチがお勧めです。
まず床に座ります。
ストレッチをしたい中殿筋側の膝を曲げた状態で、もう一方の太もも上にかぶせます。
中殿筋をストレッチするために、曲げた膝を内側へぎゅーっと伸ばすのがポイントです。
当院での施術
中殿筋周辺と反対側の腰方形筋を緩めると共に、股関節や骨盤周りの筋緊張を取り、からだのバランスを整えます。
背中の張りが強いことが多いので、体の側面を一緒に伸ばし肩関節周辺のこりも緩めます。
症例2
洋服の検品作業でずっと中腰に。翌朝になりお尻の痛みがひどく、布団から起き上がれず。
痛めた場所
仙結節靭帯は骨盤裏面にある靭帯で、身体の中で最も強い靭帯の1つに挙げられます。
骨盤後ろの仙骨と坐骨の間を繋ぐように存在し、骨盤を支える役割を担っています。
この部分がが痛みを起こす要因になるものには、腰から背中にかけて存在する多裂筋と、太もも裏面の筋肉群との関係です。
多裂筋と太もも裏面のハムストリングスがそれぞれ固くなっていると、その中間に位置する仙結節靭帯を両方から引っ張ってしまう形になり、全くあそびがなくなってしまった仙結節靭帯が痛みを起こしてしまいます。
ストレッチで改善を図るなら
注:急性の痛みがあるうちは行わないで下さい!
四つ這いになって背中を丸めます。
脱力できていないとあまり効果的ではありませんので、脱力を意識して下さい。背中の筋肉が伸びている感じが出ていれば正解です。
足を伸ばして座り、左右反対の手足で体幹を回旋させます。写真の姿勢のまま数秒停止し、背中の力をできるだけ抜きます。背骨がねじれる感じがすればストレッチできています。
脚を開いて片方の足の裏にタオルを引っかけます。後ろに体を倒して行きます。
足を伸ばしたままできついようでしたら、少し曲げながらゆっくり後ろに倒れます。ゆっくり息を吸いながら倒れましょう。
体が完全に倒れたら、タオルを胸に引き寄せるように引っぱってハムストリングスを伸ばします。
息を吐き出しながら、踵を突き上げるようにゆっくりひざを伸ばしていきます。伸びるところまで伸ばしてください。
当院での施術
仙結節靱帯を両側から引っ張ってしまっている多裂筋と太もも裏面のハムストリングスを緩めて調整します。
痛みが出ている臀部そのものより、まわりからほぐしていく方が負担も少なく、短時間で楽になります。
仙結節靱帯の痛みをかばって、首を前方へ突き出すようにした姿勢で過ごすことも多く見受けられます。胸周りや首筋を仰向けの状態でゆるめて全体のバランスを取ります。
症例3
浴槽掃除をしようとブラシを持ち、前屈みになり浴槽をこすった瞬間に右側のお尻に激痛が走る。一週間ほど右足にしびれがあり、動けなくなってしまった。その後は痛み・しびれともスッと引いた。
痛めた場所
梨状筋(りじょうきん)は、臀部の中層~深層にかけて存在する筋肉です。
坐骨神経痛の原因になりやすい筋肉で、臀部や脚にかけて痛みや痺れなどの症状がみられるようでしたら、梨状筋が原因になっている可能性があります。
梨状筋が問題を起こす背景になりやすいのは、太もも前面にある大腿筋膜張筋や、深層の小殿筋との関係によるものです。特に小殿筋と梨状筋は隣通しにあり、密接に連動しています。
さらに、梨状筋は坐骨神経と接しているために、梨状筋が固くなると坐骨神経を摩擦してしまい、坐骨神経痛症状を起こすことがあります。
ストレッチで改善を図るなら
注:急性の痛みがあるうちは行わないで下さい!
仰向けで横になり、右膝を両手で把持します。膝を右肩の方へ持ち上げるように引き上げます。お尻が浮かないようにしましょう。20~40秒を目安に左右少しずつ伸ばします。
仰向けで横になり、足を90°に曲げます。
左手で右太ももの外側を持ち、肩を引きながら膝を左側に倒していきます。右のお尻が床から浮かないように行いましょう。20~40秒を目安に左右少しずつ伸ばします。
足を組むようにして右足を左膝にかけ、左膝の裏で手を組み、ゆっくりと引き上げテンションを加えます。
背中が浮かないように気をつけましょう。20~40秒を目安に左右少しずつ伸ばします。
当院での施術
痛めてしまった日から一週間ほど経っていれば、梨状筋・小殿筋をうつ伏せ状態で入念に押圧します。
大腿の外側を走る坐骨神経のラインが固くなってしまうことが多いので、横向きの状態で大腿骨の際から坐骨神経のラインを緩めます。
仰向けでは大腿筋膜張筋と股関節を併せてゆるめ、うつ伏せ・横向き・仰向けと三方向から立体的に調整します。
まとめ
「ぎっくり尻」は、
- 腰がずっと痛んでいた
- 座りっぱなしの時間が多かった
- 極度のストレス状態が長く続いていた
- 寒い部屋に長時間いた
など、腰部への負担や冷えで引き起こされることが多く見受けられます。
また、お尻は股関節の動きと密接な関係にあります。腰を酷使したあとは、股関節をよく伸ばしておくと急なお尻の痛みを防ぐことができますよ。
月に一度、全身のバランス調整をしておくことで「全くぎっくり腰やぎっくり尻を患わなくなった!」という効果も。
特に痛みはないけれど・・・愛車同様、「定期的なメンテナンス」もお勧めです!一年経った頃には、からだの調子や使い方が大きく変わってきます。
尚、症例3のように梨状筋を痛めると坐骨神経痛のような痛みが出ることがありますが、
・足が上げられないほど痺れる・痛む
・足の感覚があまりないといった状態は、腰椎ヘルニアの疑いがあります。すみやかに、関係機関への受診をお勧めします。