患者さんのプロフィール
28歳女性(会社員)。
6年前、甲状腺に腫瘍が見つかり甲状腺全摘出。翌年には左卵巣を一部切除。
元来からだはとても丈夫で、手術後もとても元気に過ごしているが、冷え性と偏頭痛だけは改善されず。
6年前はちょうど就職活動の時期で、意に沿わない会社に何となく決め、無理に働き、心身共に来して1年で退社。
甲状腺や卵巣の病を患ったことで「自分の心身を大切にしよう」と決め、現在の会社に就職、その後結婚。とても落ち着いて過ごせている。
来院のきっかけ、理由
1.末端冷え性
手術前から症状はあったが、術後特にひどくなっている。夏も靴下は欠かせず。
2.偏頭痛がひどい
3.首・肩こり
「1」と同様、社会人になってから慢性の症状だが、術後が特に辛い。
4.生理痛・生理不順
術前は年に数回だったものが、術後は毎回痛む。生理前の痛みやPMS(月経前症候群)が特に気になる。
当院の見立て
「1.末端冷え性」について、股関節や脇の下、足首などリンパ節を含む関節の固さも大きな原因の一つなっているのではないか。むくみもあり。
「2.偏頭痛がひどい」の症状は「3.首・肩こり」が原因と見立てる。右肩甲骨内縁と左鎖骨下は特に固くなっており、首の可動域を狭くしている。
「4.生理痛・生理不順」は左骨盤が大きく開いていること、腹部と股関節が固く冷たくなっていることが原因の一つと見立てる。
全体を通し、呼吸が浅いことが不調を生んでいる可能性がある。
からだのバランスを整え、体側(からだの側面)をよく伸ばすことで自律神経のはたらきを促し、諸症状を改善できるのではないかと見立てた。
実際に行った施術
・左半身に比べ極端に固くなっていた右半身全体の筋肉を緩める(押圧加減を調整しながら、左右バランスを均等にする)。同時に背中を入念に伸ばす。
・左大腿骨の際と左恥骨結合部付近を入念にほぐし骨盤調整を行う。
・「1.末端冷え性」「4.生理痛・生理不順」に対し、特に冷えの強い股関節と臀部、下腹部をゆるめる。
・「2.偏頭痛がひどい」「3.首・肩こりに関しては、分界項線(ぶんかいこうせん:後頭部と首の境目のライン)を含めた後頭部周辺のこりを入念にほぐすと共に、肩ラインを緩めながら首の後ろにあるツボ「大椎(だいつい」を刺激。
(「大椎」→首を前に曲げて、首の後ろに最も突出する骨(第7頚椎きょく突起)の下のくぼみ部分。)
同時に、左方向へ向ける首の可動域が極端に狭いことから、右肩甲骨内縁と左胸回りの筋肉を緩め、左右の可動域を均等にする。
施術の結果
結果、30日
~転居後は90日に1度、計9回ご来院で、「1.末端冷え性」は冬の最も寒い時期のみ。
「3.首・肩こり」は長時間お子さんを抱っこした際など疲労が溜まると軽く出る程度。
「2.偏頭痛がひどい」「4.生理痛・生理不順」の症状はなくなった。
主な変化は以下の通り。
・2回目:「2.偏頭痛がひどい」に関して、偏頭痛の回数が激減した。頭痛が起きても薬は服用せずしのげた。「3.首・肩こり」は依然残るが、集中力が切れてしまう程のどうしようもないこりはなくなった。
・3回目:「1.末端冷え性」(特に手先の冷え)が薄れてきた。今までは全く感じなかったが、「3.首・肩こり」がひどくなると、手先の冷えが気になり連動していることに気付く。
以降、高いところを見つけては手を上げてぶら下がるようにしてから、「1.末端冷え性」「3.首・肩こり」共に症状が軽減する。
・6回目:中部地方に転居。(以降施術は90日に一度)環境が変わり久々偏頭痛が出るも、「4.生理痛・生理不順」やそれに伴う腰痛、PMSの症状が出ず。
以降生理周期も安定(28日~30日)。引っ越しの作業疲れなど負担が大きかったにも関わらず自分でも驚くほど不調が出ず、転居がご自身のからだに自信を持ついい転機となる。
・7回目:新居から最寄り駅まで徒歩30分の道のりを通勤の往復ウォーキングを始める。長く歩くことで「1.末端冷え性」が更に改善する。今までは長時間動くと必ず出ていた「2.偏頭痛がひどい」症状は全く出ず快調に歩ける。
・9回目:受精後まもなく流産していたことが分かる。甲状腺摘出や左卵巣切除を経験し子どもは授からないと思っていただけに、流産ながらも「子どもができるからだ」であることが分かりありがたかったとのこと。
妊娠・出産に前向きになる。今回の流産で一時腰痛を患うも大きなからだの不調は出ず、この回の施術のみで腰痛も治まる。
(※この半年後にご懐妊、無事ご出産され母子共に健康に過ごす現在に至る。)
まとめ
・左半身に比べ、右半身全体が極端に筋肉が固くなっていたことでからだのバランスが取れず、諸症状の原因となっていた。
・股関節や胸周り、下腹部のこりや筋緊張を取ることで、血行促進、リンパの流れを活性化し冷えにくいからだができあがっていった。
・偏頭痛の改善は、首の極度のこりだけではなく、肩甲骨や胸周りなど関連箇所を緩めると効果的である。
・施術の回数を重ねるにつれご自身のおからだと向き合い、自信を持ってセルフケアを上手にできるるようになったことがご懐妊・ご出産につながった。
院長からのコメント
ご無事に生まれたお子さんも2歳を過ぎ、子育てのお疲れを取るべく90日に一度のペースで現在もご来院頂いています。
軽度の首・肩こりはあるものの、とてもお元気に過ごされていることに安心します。
今回のケースは「冷え性」「生理痛・生理不順」「偏頭痛」など、一つ一つは部位も症状も異なるものですが根本は一つであること、上手にセルフケアができるとかなり症状が改善できるというとてもいい症例です。
・お食事の質や摂取の方法
・適度な運動
・適切な睡眠時間
・呼吸方法を意識する
といった至ってシンプルなセルフケアですが、どれもわたしたちのからだを驚くほど改善に向かわせてくれます。
今回の患者様は特に「食事」「ウォーキング」「睡眠時間」をとても大切に過ごされていました。
子育てに追われる今も、復職された傍らでご自身のお時間をきちんとつくり、心身共にケアされています。
セルフケアの「ケ」は「敬意」、「ア」は「愛情」だという話を伺ったことがあります。
「これをすれば必ず健康になれる!」という魔法の方法はありません。「敬意」と「愛情」を持ってご自身のおからだと向き合うヒントを見つけに、当院へいらしてみませんか?